「スマートロックを導入したいけれど、電池切れが不安」「停電が起きたら閉じ込められるのでは」——導入前に一番引っかかるのが、実は電源のことだったりします。デバイス選びばかりに目が行きがちですが、電源方式を間違えると運用が破綻することも。この記事では、電池式と配線式(電気錠)の違い、それぞれの停電時の挙動、用途に合った選び方を、メーカーの視点から整理します。

スマートロックの電源方式は「電池式」か「配線式」の二択で決まる
結論から言えば、スマートロックの電源方式は大きく 電池式 と 配線式(電気錠) の2つに分かれ、どちらを選ぶべきかは「設置場所」「利用人数」「停電時の運用ポリシー」で決まります。住宅や小規模テナントなら電池式、オフィスビルや集合施設なら配線式、というのが一つの目安です。
電池式のスマートロックは、扉に本体を貼り付けたりネジで固定したりして、乾電池やリチウム電池で駆動します。配線工事が不要なので、賃貸でも導入しやすいのが特徴です。一方で電池残量の管理は必要になります。
配線式は電気錠と呼ばれ、DC12Vや24Vの電源を建物側から供給します。制御盤やリーダーと組み合わせて多人数の入退室を管理するのに向いており、電磁錠(マグネットロック)や電気ストライクなどの錠前と接続します。
Q: スマートロックの電源方式は何種類ありますか?
A: 大きく分けて電池式と配線式(電気錠)の2種類です。電池式は工事不要で個人宅・小規模向け、配線式は電源供給が必要で中〜大規模施設向けとなります。
電池式スマートロックのメリットと電池切れリスクへの備え
電池式の最大の利点は、既存の扉にそのまま後付けできることです。原状回復が求められる賃貸物件や、施工日程を長く取れないテナント入居時にも柔軟に対応できます。私自身、自宅マンションに電池式のスマートロックを導入していますが、工事の必要がなかったので入居当日に取り付けが完了しました。
気になるのはやはり電池寿命ではないでしょうか。製品にもよりますが、一般的な電池式スマートロックは単3または単4アルカリ電池で 6ヶ月〜1年程度 動作するものが多く、電池残量が少なくなるとアプリ通知やブザーで警告します。
電池切れに関しては、いくつかの備えを組み合わせれば実運用でほぼ困りません。
- 電池残量アラートを見逃さないよう、通知を必ずオンにする
- 予備電池を室内に常備しておく
- 外部から9V電池などで一時的に給電できる非常端子付き機種を選ぶ
- 物理キー併用モデルなら、最終手段として鍵で解錠できる
「もし電池が切れたら家の外で立ち往生するのでは」と不安に思う方もいますが、多くの機種はいきなり止まるのではなく、数週間前から段階的に警告してくれます。
停電時の挙動については、電池式は基本的に 停電の影響を受けません。商用電源とは独立して動くため、災害時や工事による停電中でも通常通り施解錠できます。この点は電池式の大きなメリットです。
Q: 電池式スマートロックは停電時も使えますか?
A: 電池で駆動しているため停電の影響を受けず、通常通り施解錠可能です。ただし電池残量が十分にあることが前提となります。
配線式(電気錠)が向くケースと停電時の設計思想
オフィスビル、複数フロアの入退室管理、24時間運用の施設では、電池式では規模的にも運用的にも厳しい場面が出てきます。数百〜数千人規模のユーザーを管理し、複数の扉を同時に制御するなら、配線式の電気錠が現実的な選択肢になります。
配線式のメリットは、電池交換という保守作業が発生しないこと、そして高い出力の錠前(電磁錠なら数百kgの保持力)を安定して駆動できることです。エレベーターの階数制御や、エントランスと執務室で権限を分けるといった多層セキュリティも組みやすくなります。

一方で気になるのが停電時ですよね。配線式の場合、錠前の種類によって停電時の挙動が異なります。
- フェイルセーフ型(通電時施錠): 停電すると解錠される。避難経路の扉に採用されることが多い
- フェイルセキュア型(通電時解錠): 停電しても施錠を維持する。金庫室やサーバールームに適する
どちらを選ぶかは、その扉が「非常時に開くべきか、閉まっているべきか」で決まります。避難動線上の扉を誤ってフェイルセキュアにすると、消防法上の避難経路要件と衝突する可能性があるため、設計段階で建物の避難計画と整合させる必要があります(※詳細は所轄消防や設計者にご確認ください)。
さらに、停電対策として 無停電電源装置(UPS) や制御盤内のバックアップバッテリーを組み合わせるのが一般的です。これにより、短時間の停電なら通常通りの運用を継続できます。
Q: 配線式の電気錠は停電するとどうなりますか?
A: 錠前の種類により異なり、フェイルセーフ型は解錠、フェイルセキュア型は施錠を維持します。UPSを併用すれば短時間の停電では通常運用を継続できます。
用途別・電源方式の選び方チャート
「結局、自分のケースならどっちを選べばいいのか?」——ここが一番知りたいところですよね。代表的なシーンごとに整理します。
個人宅・分譲マンションの玄関 電池式が第一候補です。工事不要で入居時の負担が少なく、電池交換の手間も年に1〜2回程度に収まります。指紋・顔認証・暗証番号など、認証方式で選ぶのが良いでしょう。
賃貸住宅 電池式ほぼ一択です。ネジ固定でも原状回復できる後付けタイプを選び、退去時に取り外して持ち運べる機種が便利です。
民泊・小規模宿泊施設 電池式で十分対応できます。パスコードを都度発行できる機種なら、ゲストごとに固有の番号を渡してチェックイン対応が非対面化できます。運用している知人の話では、鍵の受け渡し時間が丸ごと不要になり、深夜チェックインの対応負担がなくなったとのことでした。
中小オフィス・小規模店舗 利用者20〜30人程度までなら電池式で運用可能です。それを超える規模、またはICカードでの多人数管理をしたい場合は配線式の電気錠を検討します。
大規模オフィス・ビル・工場・学校 配線式一択です。数千人規模の登録に対応し、勤怠システムや監視カメラと連動させる場合も配線式のほうが拡張性があります。
ロッカー・キャビネット・引き出し これはドア用とは別カテゴリで、専用の電池式電子錠を選びます。ドア用スマートロックはロッカーには物理的に取り付けられません。
Q: 何人までなら電池式スマートロックで運用できますか?
A: 目安として20〜30人程度までなら電池式で運用可能です。それ以上の規模ではICカードや管理システムとの連携がしやすい配線式の電気錠が適しています。
導入前に確認しておきたいのが、扉の種類との相性です。開き戸・引き戸・強化ガラス戸それぞれに対応する製品が異なるため、購入前に自宅・自社の扉タイプを確認しておくと選定がスムーズです。
エナスピレーションの製品で見る、電源方式の使い分け
弊社エナスピレーションでは、電源方式ごとに異なるブランドを展開しています。用途に合わせて選べる構成になっているので、簡単にご紹介します。

EPIC(電池式スマートロック) 住宅・ホテル客室・小規模オフィス・店舗向けの電池式スマートロックです。開き戸・引き戸・強化ガラス戸に対応し、ネジ固定で原状回復もできるため賃貸物件にも導入いただけます。認証方式は機種ごとに異なり、FACEYは顔・指紋・暗証番号、ZEUSは交通系ICカード・暗証番号、Flassaは指紋・交通系ICカード・暗証番号に対応します。アプリ・クラウド・APIはすべて追加料金なしで利用できます。
Lavish(配線式・電気錠) オフィスビルや施設向けの電気錠システムです。DC12V・24V両対応、防水IP66、最大20,000人までのユーザー登録に対応し、リーダーはスタンドアローン・Wiegand出力・制御器モードの3モードから選べます。電磁錠のコイルには銅を採用し、耐久性を高めています。エントランスやエレベーター制御にも組み込み可能です。管理は付属のPCソフトウェアで行います。
Guub(ロッカー・キャビネット専用電子錠) ロッカー・キャビネット・引き出し用の電池式電子錠です。特定利用者が事前登録するプライベートモードと、不特定多数が都度暗証番号を設定するパブリックモードを切り替えられます。オフィスのフリーアドレス化やジム・温浴施設のロッカー運用にご活用いただけます。
「電池式と配線式、両方が必要な建物ではどうすればいい?」というご相談も少なくありません。エントランスはLavish、各テナントの入口はEPIC、更衣室のロッカーはGuub、といった組み合わせでの導入実績もあります。設計段階から相談いただければ、扉ごとの最適な電源方式をご提案できます。
導入検討中の方、既存の鍵からの切り替えをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。図面や写真をお送りいただければ、扉の種類・利用規模・電源環境に応じた最適な組み合わせをご提案いたします。