「もし停電になったら、ドアが開かなくなるんじゃないか」——スマートロックや電気錠の導入を検討しているとき、多くの方がこの不安を感じます。確かに、電力を使って動く機器だからこそ、停電時の挙動は事前に把握しておきたいところです。この記事では、スマートロックの種類ごとの停電対策、フェールセーフの仕組み、バックアップ電源の選び方まで、導入前に知っておくべき内容を整理しました。

スマートロックが停電でも開く理由——電源の仕組みを知る
まず前提として、「スマートロック=停電で使えなくなる」とは限りません。製品の電源方式によって、停電時の挙動はまったく異なります。
市販されているスマートロックの多くは電池式です。電池式の場合、商用電源(コンセント)とは独立して動作するため、停電そのものの影響を受けません。電池が切れていない限り、停電中でも通常どおり解錠・施錠できます。
一方、電気配線式の電気錠(配線を引いてコントローラーで管理するタイプ)は、商用電源を使用するため停電の影響を受けます。この違いを理解しておくことが、対策の出発点です。
Q: 電池式スマートロックは停電しても使えますか?
電池が残っていれば停電の影響を受けません。商用電源と独立して動作するため、停電中も通常どおり解錠・施錠が可能です。
ただし「電池式だから安心」と油断は禁物です。停電が長引く中で電池も残量が少なかった、というケースは実際にあります。日頃から電池残量の管理と交換サイクルの把握が、最もシンプルで確実な備えになります。
電気錠の停電対策——フェールセーフとフェールセキュアの違い
電気配線式の電気錠を採用している施設では、「停電時にドアがどう動くか」を設計段階で決める必要があります。ここで登場する概念がフェールセーフとフェールセキュアです。
この2つ、似ているようで方向性がまったく逆です。
**フェールセーフ(fail-safe)**は、異常発生時に「安全側に動く」設計のこと。電気錠の文脈では「停電時にドアが開く(解錠状態になる)」挙動を指します。避難経路や人が多く集まる施設——たとえば病院の廊下ドアや避難口——では、停電時に人が閉じ込められないようフェールセーフ設計が採用されます。
対して**フェールセキュア(fail-secure)**は、異常時に「セキュリティが保たれる側に動く」設計。停電時もドアは施錠状態を維持します。金庫室・サーバー室・金融機関のバックヤードなど、無断侵入を防ぐことが最優先の場所に向いています。
どちらが「正解」ということはなく、用途・設置場所・法令要件によって使い分けが必要です。特にビルや施設への導入では、消防法や建築基準法の関連規定も確認したうえで設計することが求められます(詳細は専門家や施工業者にご相談ください)。
Q: 停電時に電気錠が自動で開く設定と閉まる設定、どちらを選ぶべきですか?
用途によって異なります。避難経路や共用部はフェールセーフ(停電時解錠)、サーバー室や保管庫はフェールセキュア(停電時施錠)が一般的な選択です。消防法の要件も確認が必要です。
停電対策の具体策——バックアップ電源と非常キー
「電気配線式を使いたいが、停電対策もしっかりしたい」という方には、以下の手段を組み合わせるのが現実的です。
UPS(無停電電源装置)の設置
UPS(Uninterruptible Power Supply)は、停電時に自動でバッテリーから電力を供給し続ける装置です。容量にもよりますが、数十分〜数時間の動作継続が可能で、電気錠の管理システムごと保護できます。オフィスビルや施設への本格導入では、UPS設置がスタンダードな対策といえます。
モバイルバッテリーによる緊急給電
一部の電気錠リーダーはUSB端子やType-C端子から外部給電できる仕様になっています。停電時にモバイルバッテリーを端子に接続することで一時的に動作させる方法で、特に電池切れ時の緊急対応としてよく知られています(停電対応と電池切れ対応を混同しやすいため注意が必要です)。
物理的な非常キー(シリンダー錠)の確保
これが最もシンプルで確実なバックアップです。多くの電気錠製品には、非常用のシリンダー錠(物理鍵)が標準で搭載されています。日常は電子認証で運用しつつ、非常用の物理鍵を管理者がセキュアな場所に保管しておく——この二重の備えが、最終的なリスクヘッジになります。
「スマートロックにしたから物理鍵はいらない」と考えてしまいがちですが、正直なところ、非常キーの管理は電子化後も続けることをお勧めします。
日常の運用で止めないための管理習慣
停電対策と同じくらい大切なのが、「電池切れで止まる」というトラブルを日常的に防ぐことです。スマートロックの現場で実際によく起きるのは、停電より電池切れによるロックアウトです。
電池式スマートロックの残量通知機能を活用してください。多くの製品はアプリやクラウドで残量を確認でき、低残量時にアラートを送信する機能を持っています。この通知を無視せず、早めに交換する習慣が重要です。
管理施設が複数ある場合——たとえば民泊物件を複数運営しているオーナーや、オフィスの複数フロアに電気錠を導入している企業——では、一元管理できるシステムの存在が運用負荷を大きく下げます。
Q: スマートロックの電池はどのくらいで交換が必要ですか?
製品や使用頻度によって異なりますが、一般的に6ヶ月〜1年が目安です。残量通知機能を活用し、20〜30%を切ったら早めに交換することが推奨されます。
「先週まで問題なかったのに、急に動かない」というトラブルの多くは、電池残量の管理不足が原因です。停電対策と電池管理、この2つをセットで考えることで、スマートロック・電気錠の信頼性は大きく高まります。
エナスピレーションの製品が停電・電池切れ対策でできること
ここまで製品に依存しない一般的な対策を説明してきましたが、最後に弊社エナスピレーションの各製品が停電・電池切れにどう対応しているかを紹介します。

EPICシリーズ(電池式スマートロック)
FACEY・ZEUS・Flassa・SLEEKYは全製品が電池式のため、商用電源の停電による影響を受けません。電池残量はアプリ・クラウドからリアルタイムで確認でき、低残量アラートにも対応しています。SLEEKYには非常キー(物理シリンダー)が搭載されており、万が一の電池切れ時にも手動で開錠できます。アプリ・クラウド・APIはすべて月額料金なしで利用可能です。
Lavish(電気配線式電気錠)
電気配線式のため、停電時の対応はフェールセーフ/フェールセキュアの設定とUPS設置がベースになります。DC12V・24V両対応で、既存の電源設備に合わせた構成が可能。登録ユーザー数は最大20,000人に対応しており、大規模施設でも実績があります。リーダーはスタンドアローン・Wiegand出力・制御器モードの3モードに対応し、管理はローカルPCのソフトウェアで行います。IP66防水準拠で屋外設置にも対応しています。
Guub(ロッカー・キャビネット用電子錠)
電池式のスタンドアローン動作で、停電の影響を受けません。ロッカーやキャビネット専用の設計で、プライベートモード(特定ユーザー登録制)とパブリックモード(都度暗証番号設定)を選択できます。
製品の選び方や設置環境に合わせた停電対策については、個別にご相談いただくことが可能です。「うちの建物に合う構成はどれか」「既存の設備とどう組み合わせるか」など、具体的なご質問はお気軽にお問い合わせください。
スマートロック・電気錠の停電対策は、「製品の電源方式を把握する」「フェールセーフ設定を確認する」「バックアップ電源と非常キーを用意する」という3ステップで整理できます。導入前に確認しておくことで、実際のトラブル時に慌てずに対応できます。具体的な構成の相談や製品の詳細は、以下のお問い合わせフォームからご連絡ください。